PLRP-S® ポリマー系逆相HPLCカラムによる合成DNA/合成RNAの分析及び分取精製ゲノム解析の発展とともに質の高い合成オリゴヌクレオチドの需要が高まってきています。合成オリゴヌクレオチドの分析及び精製方法として、HPLCはその選択性や自動化、頑強性に優れているため、一般的に広く用いられています。ここで要求されるのはカップリング効率に左右される副産物(短鎖やシークエンス・エラー)との分離であり、それは目的オリゴヌクレオチドのサイズが大きくなるにつれ難しさが増します。その分離能を向上するために、モノリス、ノンポーラス(無孔性)樹脂、多孔性樹脂などの様々な担体が試されましたが、モノリスとノンポーラス樹脂は十分な吸着量が得られませんでした。一方温度を上げた条件で多孔性樹脂を用いますと、分離が格段に向上し十分な吸着量も得られました。 また近年、siRNA(small interfering RNA)及びmiRNA(microRNA)などの小さいRNA分子が特定遺伝子の発現を抑制(Gene Silencing)していることが分かりました。医薬分野ではこの機能を利用した核酸創薬[RNAi(RNA interference)医薬]が注目を浴びており、この小さい合成RNA分子は研究用試薬として、また治療薬としても高いポテンシャルを持っております。参考文献1. においては、PLRP-S ポリマー系逆相HPLCセミ分取用カラム(300Å孔径、50〜70µm粒径、内径20mm ×長さ110mm)を用いて、合成RNAの分取精製を行っております。 今回は分離向上のため温度を上げた条件で使用される多孔性樹脂として、PLRP-S ポリマー系逆相HPLC分析カラム(100Å孔径、3µm粒径)を、従来のシリカ系逆相HPLC分析カラム(C18、200Å孔径、5µm粒径)、シリカ/ポリマー・ハイブリッド系HPLC分析カラム(C18、125Å孔径、2.5µm粒径)、安定的結合型シリカ系逆相HPLC分析カラム(C18、100Å孔径、3µm粒径)と比較しました。 図1. 温度を上げた条件における各種逆相HPLCカラムの比較 a) Column A: PLRP-S 100Å 3µm, 50x4.6mm b) Column B: Hybrid silica-methylsiloxane C18 125Å 2.5µm, 50x4.6mm c) Column C: Stable bonded silica C18 100Å 3µm, 50x3.0mm d) Column D: Traditional silica C18 180Å 5µm, 50x4.6mm
図1.の比較クロマトグラムからも分かるように、温度を上げることによって、分離能が飛躍的に改善されました。しかしシリカ樹脂とシリカ/ポリマー・ハイブリッド樹脂は、高温では物理的及び化学的に不安定となるため、高温での使用には適しておらず、その上限も60ºCですので、今回の実験において80ºCで分析できたのはPLRP-S ポリマー系樹脂だけでした。次にその耐久性について、図1.で比較した各種逆相HPLCカラムで実験しました。 図2. 温度を上げた条件における各種逆相HPLCカラムの耐久性比較(1)a) PLRP-Sポリスチレン/ジビニルベンゼンHPLCカラム: 80ºCで1,500回 図2.では分離能が落ちた時点で、カラムの入口側エンドフィティングをはずして、その樹脂のつまり具合を検証したところ、a) のPLRP-Sカラム以外は、それぞれのカラムで隙間ができてしまい、計測の結果b) では1mm、c) では5.5mm、d) では4.5mmとなりました。このデータを下に作図したのが、図3.です。 図3. . 温度を上げた条件における各種逆相HPLCカラムの耐久性比較(2) 参考文献1. Chemical synthesis of a very long oligoribonucleotide with 2-cyanoethoxymethyl (CEM) as the 2’-O-protecting group: structural identification and biological activity of a synthetic 110mer precursor-microRNA candidate: Yoshinobu Shiba, Hirofumi Masuda, Naoki Watanabe, Takeshi Ego, Kazuchika Takagaki, Kouichi Ishiyama, Tadaaki Ohgi and Junichi Yano, Nucleic Acids Research, 2007, Vol. 35, No.10, 3287-3296 Topics>> |