アーリック™(ERLIC™: Electrostatic Repulsion/Hydrophilic Interaction Chromatography)イオン的反発作用/親水性相互作用 ミックス・クロマトグラフィ分離モード |
アーリック(ERLIC: Electrostatic Repulsion/Hydrophilic Interaction Chromatography)は、新しいイオン的反発作用/親水性相互作用のミックス・クロマトグラフィ分離モードです。 アーリックでは以下のことができます。
クロマトグラフィ・モードにおいて、高い電荷を持つ生化学的化合物は、しばしば低い電荷を持つ化合物よりもより強く保持されます。例えばイオン交換体クロマトグラフィと親水クロマトグラフィ(HILIC)の両方において、ATPはAMPより強く保持されます。そして高い電荷を持つ化合物と低い電荷を持つ化合物の両方を、同一上のクロマトグラムに収めるためには、グラジエントが必要となります。しかし最も高い電荷を持つ化合物と同じ電荷(イオン交換基)を持つイオン交換体カラムを、親水クロマトグラフィとのミックス・モードで使用しますと、これら化合物とカラムとの相互作用が、イオン的反発作用(electrostatic repulsion)との拮抗によって選択されます。このことからアイソクラティックで、より少なく高い電荷を持つ化合物を、同一上のクロマトグラム上で溶出できます。 A. アイソクラティック分離法
例A-1. ERLIC vs. HILIC of Amino Acids (100Å pore columns):
例A-2. ERLIC vs. HILIC of Acidic, Basic, and Neutral Peptides (300Å pore columns):
例A-3. ERLIC of Nucleotides:
B. リン酸化ペプチド(Phosphopeptides)の分離 ペプチドのリン酸基はpH2.0において、幾つかの(−)電荷を保持しています。このことにより(+)のイオン交換基を持つ陰イオン交換体カラムで、一ヶ所だけリン酸化しているペプチドを、トリプシン消化物から分離することができません。なぜならイオン的吸着力が、N末端基とリシンまたはアルギニンのC末端基からのイオン的反発力を、十分に上回ることができないからです。しかしリン酸基は非常に親水性に富んでいますので、このアーリック・モードは、イオン的吸着力と親水性相互作用の組み合わせによって、トリプシン消化物のリン酸化していないペプチド群から、一ヶ所だけリン酸化しているペプチドを引き離すのに十分です。またIMACやチタンなどのアフィニティ担体の場合とは違って、リン酸化ペプチドの各々が良く分離されています。このことにより多くのフラクションで、簡便にリン酸化ペプチドが分離できます。そして一つのサンプルから、数千のリン酸化ペプチドの配列を認識するリン酸化プロテオミクス(phosphoproteomics)において、重要な手法となります。複数のリン酸基を持つペプチドは、カラムに強く保持されてしまいますので、溶出には塩のグラジエントが必要となります。
例B-1. Tryptic Digest of Beta-Casein: Separation with the Same Column in the ERLIC and Anion-Exchange Modes:
PolyWAX LP 300Å, 5µm, 100×4.6mm(104WX0503)カラムを、アーリック(ERLIC)モードと陰イオン交換体(Anion Exchange)モードの両方で使用しました。陰イオン交換体モードでは、一ヶ所だけリン酸化しているペプチドの保持が非常に弱いです。 B-2. Fractionation of the Tryptic Digest of HeLa Cell Lysate:
ここでも同じくPolyWAX LP 300Å, 5µm, 100×4.6mm(104WX0503)カラムを、アーリック・モードで使用しました。そして低い塩濃度のフラクションにおいてはHyperCarb®での脱塩を行い、高い塩濃度のフラクションにおいてはC18シリカでの脱塩を行うことが、リン酸化ペプチドの最も高い回収率を得られます。 アーリック・モードによるアプリケーション別の使用カラム例 PolyWAX LP™ and PolySULFOETHYL A™ are trademarks of PolyLC. |