ポリキャットATM (PolyCAT ATM)
シリカ系弱陽イオン交換体HPLCカラム(タンパク質)

高純度の多孔性球型シリカゲルを基材として、ユニークな製造方法によってその表面親水性に優れた(-)の電荷をもつポリ(アスパラギン酸)の薄膜で共有結合させ、完全に被覆したのがポリキャットA(PolyCAT A)カラムです。
このカラムの修飾官能基は通常のCM(カルボキシルメチル基)タイプに相当し、ペプチドの親水性薄膜で被覆された担体は、タンパク質の非特異的吸着が最小限におさえられるのでシャープなピークをテーリング無しに得られます。
通常の酵素を、ポリキャットAカラムに負荷した際でも活性の回収率が高く、時には活性を定量する事もできます。また、ポリキャットAカラムのタンパク質吸着量は高く、カラムは丈夫で再現性に優れています。

ポリキャットAカラムは、等電点がpH6.0以上のタンパク質の分離に最適です。このカラムに使用する移動相溶媒は、一般のCMタイプのカラムと同じで、pH6.0〜7.0程度のバッファーを使用します。グラジエントとしては、塩濃度かpH勾配(または塩濃度/pH併用勾配)を使用します。ポリキャットAカラムは、しばしばアミノ酸一個の相違による分離を可能にしました。このような高分離能をもつカラムは、ヘモグロビンの分離などに最適です(ヘモグロビン用ポリキャットAカラムは1000Å/1500Å孔径の担体が最適です)。

そしてポリキャットAカラムは、目的タンパク質のバリアント(variants:アミノ酸一個の相違しかないような類縁物質)が、多種類混在しているサンプルでも、酵素/CNBrなどによる消化処理をせず、その大きさのままで、アミノ酸一個の相違による分離/分析を可能 にしました。
図3.は精製した組換ヒト成長ホルモンをpHの違う溶液に、37℃で6日間保存したサンプルを分析した例です。ここではpH8.3の場合に、主に脱アミド化が発生し、pH6.8の場合は加水分解が加速されます。図4.はモノクローナル抗体におけるバリアントを分離した例で、通常H鎖におけるC-末端の第一アミノ酸残基(リシン残基、もしくはアルギニン残基)の欠如によって、バリアントが生じます。図4.では大きな三番目のピークが正しいアミノ酸配列のモノクローナル抗体で、二番目が1本のH鎖のC-末端からリシン残基が欠損したバリアント、そして一番目が2本のH鎖のC-末端からリシン残基がそれぞれ欠損したバリア ントです。他の小さなピークは、二個以上のアミノ酸残基が欠損したバリアントや、酸化などによって生じたバリアントの可能性があります。
また多くのモノクローナル抗体には、糖質(シアル酸) がついており、これが変化します。そしてモノクローナル抗体の活性が、この糖質(シアル酸)の度合いに影響される場合もあります。このシアル酸のバリアントを分離するには、1000Å/1500Å孔径のポリキャットAカラムを使用して、緩い勾配の塩濃度/pH併用勾配を使用します。その際pHは、個々のモノクローナル抗体で至適化が必要です。

応用例
  1. ヘモグロビン分析(Hb A1cとバリアント)

  2. 等電点がpH6.0以上のタンパク質

  3. ホルモン、成長因子など3個以上の塩基性 アミノ酸残基を含有するポリペプチド[通常ポリスルフォエチルA(強陽イオン交換体HPLC)では溶出の難しい物質]

  4. 揮発性の移動相を用いて、塩基性溶解物を陽イオン交換体分離モードで精製

  5. アイソフォーム(isoforms) 分析の品質管理[例:モノクローナル抗体におけるシアル酸のバリアント(sialylation variants)]

  6. ヒストン[親水クロマトグラフィ(HILIC: Hydrophilic Interaction Chromatography)とイオン交換体クロマトグラフィのミックス・クロマトグラフィ分離モードの適用]

高分子のタンパク質(ヘモグロビン、免疫グロブリンなど)には、1000Å/1500Å孔径のポリキャッ トAカラムの選択性が最適です。

■ポリキャットA力ラムによるH1ヒストンの分離例

下図5.はH1ヒストンのアイソフォームでりん酸化している位置やその度合の違いをポリキャットAカラムで分離した例です。
下図6.はH1ヒストンでも、幾つかは異なる遺伝子由来や、また他はリシン残基がメチル化したような微妙な違いでしかありません。ポリキャットAカラムは、イオン交換体分離モード(図6.II.参照)のみでは、これらの微妙な違いは分離できませんが、70%の有機溶媒を含有する移動相を使用して、親水クロマトグラフィを併用したミックス・クロマトグラフィ分離モード(図6.III.参照)で行えば分離できます。

 

 

■ポリエルシー社(PolyLC Inc.)のユニークなイオン交換体HPLCカラム使用の際の秘訣

A. 揮発性の移動相

ポリエルシー社の陽イオン交換体力ラムは  揮発性の移動相でも使用できます。希釈した酢酸アンモニウム溶液中にあるペプチドをカラムに負荷して担体に吸着させ、次に5〜10%酢酸のステップ条件もしくはグラジエント条件で溶出します。強塩基性ペプチドにはポリキャットAを使用し、他のペプチドにはポリスルフォエチルAカラムをお勧めします。この方法はアミノグリコシド系 抗生物質などの強塩基性の物質にも適用できます(下図8.II.参照)。

 

B.

移動相に有機溶媒を混合

40%以上の有機溶媒を含有する移動相をポリエルシー社の陽イオン交換体力ラムに使用しますと、サンプルの極性の違いや、塩基性アミノ酸残基の違いにも敏感に反応します(下図6.参照)。例えばセリン残基の有無や、リシン残基のメチル化などの違いによる分離に使用でき、このことにより高分子量の組換え体ポリペプチドや合成ペプチドの微妙なアイソフォームの分離に最適です。

 

下図7.は、糖鎖をもつ組み換え体ポリペプチドのα−bungarotoxinの分析において、移動相に40%の有機溶媒を加えたところ、シアル酸のバリアントまで分離できる画期的な分離モード(下図7.II.参照)となりました。
下図8.は精製されていない合成りんペプチドを、I.は逆相分配クロマトグラフィ分離モードで分離精製しました。ここでは、誤ったアミノ酸配列をもつ幾つかのバリアントが、メインピークと一緒に溶出してしまいました。次にII.はこのI.の斜線で塗られているバリアントを含むメインピークを、イオン交換体クロマトグラフィ分離モードで、再度分離精製しました。
ここではポリキャットAカラムに移動相として、揮発性の酢酸を使用することにより、この塩基性合成りんペプチドと、そのバリアントがもつ電荷の違いを、順次その電荷を一個づつ除くようにして溶出しました。そして揮発性の移動相を使用することによって、イオン交換体クロマトグラフィでも直接LC/MSとして質量分析装置に負荷することが可能となり、この図8.II.の各ピークは、質量分析装置で検証されました。ただし、この手法はポリスルフォエチルA(PolySULFOETHYL A)などの強陽イオン交換体力ラムですと、保持が強すぎて使用できません。

 

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