HYDROPHILIC INTERACTION CHROMATOGRAPHY(HILIC) | 親水クロマトグラフィ分離モードの紹介
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親水クロマトグラフィ[Hydrophilic Interaction Chromatography (HILIC)]は順相クロマトグラフィの一種で、固定相は多孔質の球型シリカゲルを基材として、その表面をペプチドの親水性薄膜で完全に被覆したゲルに水酸基やイオン交換基を結合した担体です。移動相は、有機溶媒を含む水系バッファーなどを使用します。 ■親水クlロマトグラフィのメカニズム 親水性の担体が充填されたカラムを疎水性の移動相溶媒(通常は有機溶媒)で溶出する際、固定相は移動相よりも極性が高くなります。このため、カラムに注入されたサンプルは、まず担体に全部吸着した後、順次に親水性の低い物質から溶出していきます。このクロマトグラフィ分離メカニズムは、逆相分配クロマトグラフィとは正反対の仕組みです。 ■親水クロマトグラフィの応用例 親水クロマトグラフィは新しいクロマトグラフィ分離モードの一つで、逆相分配クロマトグラフィでうまく分離できない親水性の高いサンプルや、電荷を多く帯びたサンプルの分析/分取に最適です。一般的にペプチドにおいて、塩基性アミノ酸配列部分が最も親水性が高く、次にりん酸化したアミノ酸配列部分、そしてアスパラギン酸、セリンと順次に親水性が低下していきます。 |
■親水クロマトグラフィ用担体 親水クロマトグラフィ用の全く新しい担体として開発された、ポリハイドロキシエチルA(PolyHYDROXYETHYL A)カラムは、サンプルを担体との親水性相互作用だけで保持します。 ■親水クロマトグラフィでの移動相 サンプルの担体への保持力は、移動相溶媒に含有される有機溶媒の濃度に比例します(逆相分配クロマトグラフィとは正反対)。最も一般的な親水クロマトグラフィの移動相は、65〜80%のアセトニトリル及びプロパノールを含有しています。 |
ポリハイドロキシエチルA™(PolyHYDROXYETHYL AspartamideTM) |
シリカ系親水クロマトグラフィHPLCカラム
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ポリハイドロキシエチルA(PolyHYDROXYETHYL A)カラムは、ポリエルシー社が、親水クロマトグラフィ用として特別に開発した中性で親水性の担体です。 親水クロマトグラフィの移動相溶媒では、ペプチドなどのサンプルが担体とほとんど親水性相互作用だけで保持されています。また移動相溶媒中の塩は通常微量で、必要としても10mM濃度があれば十分です。これらの特徴から、多く電荷を帯びたペプチドや核酸などの分離に最適です。 ポリハイドロキシエチルAカラムは、揮発性の移動相溶媒を必要とするペプチドなどのクロマトグラフィ分離モードとして、唯一逆相HPLCカラムの代替品となるもので、ペプチドシーケンスの前処理としての分取/精製に最適です。 |
ポリハイドロキシエチルAカラムの保持比は、ポリエルシー社の他のイオン交換体クロマトグラフィカラムを親水クロマトグラフィ分離モードで応用した時と比較して、若干違ってきます。一般的にポリハイドロキシエチルAカラムは、塩基性アミノ酸残基を含有しないアミノ酸配列で構成されているペプチドを強く保持します。 |
りん酸化反応は、ペプチドの親水性化を促すので、ポリハイドロキシエチルAカラムは基質やチロシンキナーゼ活性の産出物などの分離にも利用できます。また、ポリハイドロキシエチルAカラムは、糖などの親水性で非電解質の物質の分離にも利用できます。 |
下図14.は糖ペプチドを逆相分配クロマトグラフィ及び親水クロマトグラフィ分離モードを併用して糖鎖部位を分離精製した例です。逆相分配クロマトグラフィ(C18)で分離された糖鎖ペプチド断片を含有するフラクションを、再度親水クロマトグラフィに負荷して分析すると、異なる選択性が得られました。糖鎖の一次配列は、その後直接、質量分析装置へ負荷して得られた情報です。 | ||||||||||||||||
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下図15.は逆相分配クロマトグラフィ分離モードで分離精製しますと、約5%のサンプル回収率しか得られなかったペプチドサンプルが、親水クロマトグラフィ分離モードで分離精製しますと、サンプルの回収率がはるかに向上し、かつ定量ができるまでの完璧な分離を可能にしました。 |
下図16.は既知の成長因子の一つであるGHKが、生体内において、高分子タンパク質の分解作用過程において発生することが可能であることを示した例です。I.ではまずGHKとKGHKが含有されるSPARCタンパク質のペプチド断片(20mer)をトリプシン消化酵素で処理して、親水クロマトグラフィ分離モードで分析します。この際GHK/KGHKのピークはUV検出器で十分な感度がとれ、溶出時間の推測ができました。II.ではSPARCタンパク質全体のトリプシン消化物をI.と同等の分析条件で行いましたが、GHK/KGHKの含有されている量が、タンパク質全体から見るとあまりにも小さいので十分なUV検出器の感度がとれませんでした。このためI.の分析データから推測できているGHK/KGHKの溶出時間の部分をフラクションとしてとり、直接、質量分析装置へ負荷して、最終的にGHK/KGHKの存在を確認しました。この際揮発性の塩である、ぎ酸アンモニウムを含有する移動相を使用していますので、低吸光度であるUV210nmを使用しても、ベースラインにノイズが多く、一部不安定になります。 |