イオンペア試薬を利用した順相(PolyHYDROXYETHYL A™)/質量分析装置 による糖タンパク質の検出と定量 |
糖タンパク質の構造決定と定量を質量分析装置で行うためには、タンパク質分解酵素で消化した複合タンパク質混合サンプルから、効率的に糖ペプチドだけを分離しなくてはなりません。ここではイオンペア試薬として幾つかの酸を用い、順相(親水クロマトグラフィ) [IP-NPLC: Ion-Pairing reagents in Normal Phase Chromatography]で解析した結果、糖鎖が結合していないペプチドと糖ペプチド間で疎水性の差を広げ、再現性のある分離を紹介しています。具体例として、リボヌクレアーゼBとフェチュインをトリプシン酵素で消化した混合サンプルから、N-結合高マンノース型糖鎖とシアル酸が結合した糖ペプチドを再現性良く分離した例を示しています。 O-結合型糖鎖が結合した糖ペプチドに関しては、まずN-結合型糖鎖をPNGaseで除去した後、IP-NPLCを使用して、トリプシン酵素で消化したフェチュインから効率的に分離できます。またIP-NPLCは、Campylobacter jejuni 11168とそのpgID 突然変異体から抽出したPeriplasmic proteinのトリプシン消化物から、シアル酸を結合していないHeptasaccharideで修飾されたバクテリア由来のN-結合型糖鎖を、ほぼ100%カバーしています。更にラベル化することなく、ナノフロー逆相液体クロマトグラフィHPLCシステムを用いて、野生型Campylobacter jejuni 11168とそのpgID 突然変異体で発現している糖ペプチドの差を、定量的に評価しています(出典文献1.)。 この文献中では幾つかのカラムが試されていますが、極性物質の分析用に開発された親水クロマトグラフィ(HILIC: Hydrophilic Interaction Chromatography)用担体であるポリハイドロキシエチルA(PolyHYDROXYETHYL A)カラムの結果が良好でしたので、その幾つかのデータをご紹介いたします。
図2. N-結合型糖鎖がPNGaseで切除済みのフェチュインを、トリプシン酵素で消化し、シアル酸の結合したO-結合型糖ペプチドをIP-NPLCで分離 N-結合型糖鎖をPNGaseで消化したフェチュイン(13.8pmol)の、糖ペプチド・フラクションに含有されるペプチドを、IP-NPLC/MSで解析したTIC (Total ion mass spectrum)です。糖ペプチドのアンモニウム付加物をラベル化せず、1%塩酸+ 50mM炭酸水素アンモニウムのイオンペア試薬を添加して分析しました。またMS2 のスペクトラムは、m/z 1111.95(2+)でイオン化しました。
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