ALIS (Automated Ligand Identification System)メソッド:ポリハイドロキシエチルA(PolyHYDROXYETHYL A)カラムを利用した
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最近の進歩した医学療法においても、免疫力が弱体化した癌患者、臓器移植患者、化学療法患者、エイズ患者などでは、生命にかかわる細菌感染がより顕著な臨床問題となっています。そこでより広範囲な薬効活性を持ち、また強い安全性の側面を保ち、そして経口投与が可能な分子構造を持つ、新しい抗菌剤の開発が必要となりました。そのための一つのスクリーニング技術であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)フィットネス・テストを利用して、天然抽出物からparnafungins という新しい抗菌天然物質群を発見しました。この物質はmRNA開裂とポリアデニル複合体の鍵となる構成要素のポリアデノシン・ポリメラーゼ(PAP: polyadenosine polymerase)酵素を阻害します。parnafunginsは中性pHにおいて、構造転換異性体に素早く転換するため、PAPに最も親和性を持つ構造異性体を、通常の生化学的分析法で測定しようと試みましたが成功しませんでした。それでメルクのグループが、今回ここで紹介するアフィ二ティ選択的/質量分析装置(AS-MS: Affinity Selection/Mass Spectrometry)測定法を利用して、「bent」構造異性体(parnafungin B)より「straight」構造異性体(parnafungin A)の方が、PAPに親和性があることを解明しました。このアフィ二ティ選択的/質量分析装置システムは、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC: Size Exclusion Chromatography)による分離とLC/MS(逆相カラム/質量分析装置)が一体となって、一つの自動化システムになっています。このシステムによって膨大な化合物ライブラリーから、目的のタンパク質などに対して親和性のある化合物のスクリーニングを迅速に行なうことができます。このシステムのモデルケースとして、ヒト血清アルブミンと抗凝固剤のワーファリンを例にとって測定してみました(図1.参照)。このプレインキュベートしたサンプルをシステムに負荷しますと、まずSEC分離により目的タンパク質と目的タンパク質+化合物コンプレックスは、非結合化合物と15秒程度で分離できます。ここで排除限界を超えてカラムのボイド・ボリューム(V0: void volume)に溶出した、最初のピークとしての目的タンパク質と目的タンパク質+化合物コンプレックスは、トラップされて逆相カラムに送られ、次のピークとして溶出した非結合化合物は廃棄に回されます。逆相クロマトグラフィにおいては、低いpH(〜pH2)に目的タンパク質をさらして、吸着していた化合物を解離させ、その化合物を通常の水/アセトニトリルのグラジエントで分離して質量分析装置で解析します(出典文献1.)。 図1. アフィ二ティ選択的/質量分析装置システムの略図 (from G.C. Adam et al., J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 16704-16710)
図2. Parnafunginsの構造(化合物1と2が主要な構造異性体) (from G.C. Adam et al., J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 16704-16710) アフィ二ティ選択的/質量分析装置(AS-MS: Affinity Selection/Mass Spectrometry)測定法における、ポリハイドロキシエチルA (PolyHYDROXYETHYL Aspartamide)カラムを利用した、超高速サイズ排除クロマトグラフィによるハイスループット・スクリーニング条件 サンプル:ヒト組み換えPAP (タンパク質負荷量: 9µM濃度で1.5µL容量)
図3. 抗菌活性を持つF. larvarum からの天然抽出物で、ヒトPAPに吸着する化合物1と5の検出と濃縮 (from G.C. Adam et al., J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 16704-16710) (上図) AS-MS: 抽出物中のヒトPAPに吸着するparnafunginsを検出したLC/MS解析結果 (下図) LC/MS: 抗菌活性を持つ抽出物のLC/MS解析結果
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