酵母菌のプロテオーム解析に関して、以前に米国 Dr. John Yates のグループによる、オンラインでの二次元クロマトグラフィ
SCX/RP/MS/MS(強陽イオン交換体HPLCカラム/逆相HPLCカラム/タンデム質量分析装置)を利用しての解析例を紹介しました(2001年4月掲載)。今回は、米国
Dr. Steven Gygi のグループによる、一部オフラインを利用しての解析例を紹介します。まず1mgの全酵母菌タンパク質をトリプシン酵素で消化し、一次元目のポリスルフォエチルA(PolySULFOETHYL
A)強陽イオン交換体(SCX)HPLCカラムで分取する際、80分間のリニアー・グラジエント溶出において、1分毎にフラクションを分画採取します。次にこの採取された80分画のフラクションを濃縮しまして、個々にオフラインで、二次元目の逆相HPLCカラムを含むRP/MS/MSに負荷しました。その結果162,000以上のMS/MSスペクトルが入手でき、そのうちの26,815が酵母菌由来ペプチドと合致しました。そしてこの一回の解析で、7,537個の酵母菌由来ペプチド及び、1,504酵母菌タンパク質が解明されました(出典文献1.及び2.)。
一方、オンラインの方は、(+)の電荷を帯びた総てのペプチド断片サンプルを、強陽イオン交換体(SCX)HPLCカラムに負荷して吸着させ、塩濃度をステップワイズで上げて溶出してきた個々のフラクションを、直列でつないである逆相HPLCカラムにダイレクトで吸着させます。そして、これらのペプチドが逆相HPLCカラムから溶出され、自動的にタンデム質量分析装置で解析されます。
以上のことから、二次元クロマトグラフィにおける、オンラインとオフラインを比較しますと、下記の点が挙げられます。
1. |
オンラインですと、完全自動化ができます。
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2. |
オンラインは15段階ぐらいまでの、塩濃度のステップワイズ溶出が適用されますが、オフラインは二液混合による、塩濃度のリニアー・グラジエント溶出が適用されるため、オフラインで分離されたペプチド数の方がずっと多くなります。 |
3. |
強陽イオン交換体(SCX)カラムの分離において、通常 >20% ACNを移動相に添加すると、より一層の分離能が得られるため、オフラインではこの移動相が適用できますが、オンラインでは5〜10%
ACNまでしか、移動相に添加できません。 |
4. |
採取できるフラクションの分画数が、オンラインですと15分画で、オフラインですと96分画(96穴プレートを使用)となります。 |
5. |
オフラインですと、研究者の裁量で解析したいフラクションの分画が選択でき、また興味のある分画は、再解析ができます。 |
図1.一次元目のPolySULFOETHYL A(SCX)による分離
サンプル: |
トリプシン酵素で消化された全酵母菌タンパク質のペプチド断片を、0.1%TFA と25%ACNで調整
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カラム:
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202SE0503(PolySULFOETHYL A 300Å, 5µm, 2.1mm内径 × 200mm) |
移動相A:
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5mM リン酸バッファー、25%ACN、pH3.0 |
移動相B:
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移動相A + 350mM KCl |
グラジエント:
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5%→35% 移動相Bの80分間グラジエント |
流速:
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0.2ml/min |
検出器:
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UV 214nm |
フラクション: |
80分間グラジエントにおいて、1分毎に80フラクションを分画採取 |
図2.オフラインのSCX/RP/MS/MSによる酵母菌のプロテオーム解析
出典文献 1. |
Proteomics: the move to mixtures, Junmin Peng and Steven P.
Gygi, Journal of Mass Spectrometry, 2001; 36: 1083-1091 |
出典文献 2. |
Evaluation of Multidimensional Chromatography Coupled with Tandem
Mass Spectrometry(LC/LC-MS/MS) for Large-Scale Protein Analysis:
The Yeast Proteome, Junmin Peng, Joshua E. Elias, Carson C. Thoreen,
Larry J. Licklider, and Steven P. Gygi, Journal of Proteome
Research 2003, 2, 43-50 |
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