親水クロマトグラフィ(HILIC: PolyHYDROXYETHYL A™)を利用した LC/MSによる植物のメタボローム(Metabolome)解析
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植物の網羅的メタボローム解析*において、質量分析装置(MS)を利用した LC/MS による分析方法が検討されてきましたが、極性物質の分離には親水クロマトグラフィ[Hydrophilic
Interaction Chromatography(HILIC)]が利用できます。
今回ここで紹介します Max Planck InstituteのDr. Tolstikovのグループは、Arabidopsis thaliana
葉身からの粗製抽出物を、網羅的にメタボローム解析しました。一般的に二次的代謝産物のプロファイルは、特定の化合物クラスに限定されていました。そこで質量分析における、典型的なエレクトロスプレー(ESI)でのイオン化条件で、イオン化できる化合物とカロチノイドなどのようなイオン化しにくい化合物など、一次的及び二次的代謝産物の網羅的なプロファイルを得る際に、高い解析度のクロマトグラフィを付随したUVとMSの併用が必要となります。ESIで知られているイオン化抑圧とその組成効果のため、HPLCによる分離は、確固として信頼性がある量的メタボローム解析での必要条件です。ここでは親水クロマトグラフィ(HILIC)と逆相クロマトグラフィを評価しました。その上、イオン化できずUV吸収の強い化合物などの探索や、サンプル前処理中に生じる代謝産物の分解物質(例:酸化、メチル化)などの探索によって、完全なメタボローム的アプローチが、どれだけ網羅性を有するかも評価しました(出典文献1.及び2.)。
*メタボローム解析は、多様的な代謝経路を経て産出される代謝産物を、網羅的に解析することです。
図1. 親水クロマトグラフィ/質量分析データ
サンプル:
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葉身からの粗製抽出物(0.3μl) |
カラム: |
150.32HY0301 (PolyHYDROXYETHYL
A 100Å, 3μm, 0.32mm内径 × 150mm) |
移動相 A: |
アセトニトリル |
移動相 B:
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6.5mM 酢酸アンモニウム、pH5.5 |
グラジエント:
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15→60%移動相Bの90分間グラジエント |
流速: |
6μl/min |
検出器: |
ESIイオントラップ質量分析装置
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出典文献1. Comprehensive Metabolome Analysis of Crude Arabidopsis
Thaliana Leaf Extracts by LC/ESI-MS^n/UV Coupling, Vladimir Tolstikov,
Nobuo Tanaka, and Oliver Fiehn, Metabolomics 2003(April 2003) in
Potsdam, Germany 発表用ポスター
出典文献2. Analysis of Highly Polar Compounds of Plant Origin:
Combination of Hydrophilic Interaction Chromatography and Electrospray
Ion Trap Mass Spectrometry, Vladimir V. Tolstikov and Oliver Fiehn,
Analytical Biochemistry 301, 298-307(2002)
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