マブゾーベントA2P™(MAbsorbent A2P®)合成リガンド・アフィ二ティ
クロマトグラフィ樹脂による抗体精製

精製されたポリクローナル抗体は、生化学の研究及び抗体由来のバイオ医薬品の製造において、非常に貴重なものです。抗体精製の一般的な手法としては、微生物のS.aureus細胞壁由来であるプロテインAと、Streptococcus細胞壁由来であるプロテインGをリガンドとするアフィ二ティ樹脂を使用します。ところが従来のアフィ二ティ樹脂は比較的高価で、更に洗滌に費用がかかるため、最近はプロテインAやプロテインGの代替として、幾つかの樹脂が開発されてきました。これらの合成リガンドの多くは、粗精製の試料から抗体をダイレクト・キャプチャー(direct capture: 直接捕捉)することができます。遺伝子組み換えプロテインAは、比較的過酷な洗滌方法でも使用できる丈夫な分子ですが、血清などの供給原料から初期の段階で、抗体を直接捕捉するために、プロテインAやプロテインGを使用するのは疑問的です。これは血清が持つ粘性、比較的高い抗体濃度、その他のタンパク質(アルブミンやトランスフェリンを含む)と、タンパク質以外の不純物(脂質や低温沈殿物など)が非特異的に樹脂に吸着し、樹脂の再使用及び吸着量などに不利な影響を与えます。これらの問題点は化学的に安定していて、過酷な洗滌工程の組み合わせも評価できる、合成リガンドを持つ樹脂の使用によって、ほとんど解決します。このことは抗体溶出後の樹脂を、洗滌/再平衡化して何度も使用するクロマトグラフィ工程で、樹脂に非特異的に吸着している不純物の除去を確実にします。

プロメティック・バイオサイエンス(ProMetic Bioscience)社のマブゾーベントA2P(MAbsorbent A2P)リガンドは、トリクロロトリアジン化合物を二置換のフェノール誘導体で、6%架橋アガロース担体のピュラビーズ(PuraBead)に固定化して、クロマトグラフィ樹脂として市販されています。ここではヒツジ血清からポリクローナル抗体をダイレクト・キャプチャーする手法の詳細を紹介します(出典文献1.)。

図1. マブゾーベントA2P樹脂によるポリクローナルIgGの精製

 

サンプル: 希釈/pH調整をせず、0.2µm孔径のシリンジ・フィルターでろ過したヒツジ血清(30ml)
カラム: マブゾーベントA2P樹脂(25ml)をGEヘルスケア社製XK16/20
カラム(1.6cm 内径×20cm長さ)に充填
平衡化バッファー: 100mMりん酸ナトリウムpH7.5(±0.3)
洗滌バッファー: 25mMりん酸ナトリウムpH7.5(±0.3)、100mM 塩化ナトリウム、25mMオクタン酸ナトリウム
溶出バッファー: 50mMくえん酸ナトリウムpH3.0(±0.2)
流速: 3.35ml/min
検出器: UV280nm
温度: 室温

図2. マブゾーベントA2Pで精製したIgGの非還元SDS-PAGE分析

Lane 1: Mark 12 molecular weight standards (Invitrogen)
Lane 2: Hyper-immunized ovine serum (0.2µl load)
Lanes 3-5: Purified IgG from three consecutive purification cycles
Lane 6: Ovine polyclonal IgG standard (Jacksons ChromPure, representative sample lane from a separate gel shown)
Minor cropping at the bottom of the gel has been undertaken to remove the unresolved insulin (3kDa) standard.

出典文献1. Pufification of antibodies using the synthetic affinity ligand absorbent MAbsorbent A2P, Sunil Chhatre, Nigel J Titchener-Hooker, Anthony R Newcombe and Eli Keshavarz-Moore, Nature Protocols, Vol. 2, No. 7(2007)1763

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