ビースト™ (BIST™) HPLCカラム

ビースト(BIST: Bridge Ion Separation Technology)HPLCカラムは、シルク・テクノロジー(SIELC Technologies)社が開発した、ユニークで新しい液体クロマトグラフィ技術です。ビースト・カラムは電荷を帯びた有機物質及び、無機物質に対して、従来とは異なる分離モードを提供します。

ビースト(BIST)のメカニズムと特性:

カラム 表面電荷 対象



ビースト(BIST) A (-) 電荷 陰イオン
ビースト(BIST) B (+) 電荷 陽イオン

イオンを異なるように分析

二重電荷したバッファーイオンを含有した移動相は、固定相表面の極性を切り替えます。例えば(+)電荷をもつ固定相表面と、2個の(-)電荷をもつ二重電荷したバッファーイオン(例:イオン化した硫酸から発生した硫酸イオン)を含有した移動相は、(-)電荷をもつ固定相表面となります(図1.参照)。

図1. (+)電荷をもつ固定相表面が、正味荷電で(-)電荷をもつ

しかしこの現象が起きるのは、相対的に低濃度の水が、移動相中に存在するときです。水が移動相中の主成分となったときは、個々の電荷イオンの周囲に溶媒和殻を形成し、固定相表面の切り替えを阻止します(図2.参照)。

図2. (+)電荷をもつ固定相表面が、正味荷電でも(+)電荷をもつ

同じ現象が(-)電荷をもつ固定相表面と、2個の(+)電荷をもつ二重電荷したバッファーイオン[例:ジアミン(diamines)または、Mg2+ 及びCa2+ などの無機イオン]を含有した移動相で、(-)電荷をもつ固定相表面の正味荷電を(+)電荷とし、固定相表面の極性を切り替えます。 (図3.参照)。

図3. (-)電荷をもつ固定相表面が、正味荷電で(+)電荷をもつ

実際どのようにビーストは働き、HPLC分離を助けるか?

  1. 移動相に二重電荷したバッファーイオンが存在
  2. 二重電荷したバッファーイオンは、固定相表面に託すために反対の電荷
  3. 移動相中の水の軽減は、イオン溶媒和を最小限化

従来のイオン交換体クロマトグラフィでは、溶質イオンがカラムの電荷した固定相表面と、イオン的相互作用で分離されます。もし溶質イオンと電荷した固定相表面が互いに反対の電荷であれば[例:(-)電荷をもつ固定相表面と、(+)電荷をもつ溶質イオン]、溶質イオンはカラムの固定相表面に吸着され、電荷イオンの個数、大きさ、その他のファクターによって、その保持力に影響してきます。しかしもし溶質イオンと電荷した固定相表面が、同じ電荷であれば[例:(+)電荷をもつ固定相表面と、(+)電荷をもつ溶質イオン]、溶質イオンと電荷した固定相表面がイオン的反発作用で、固定相樹脂の孔に入らずに溶出します。このことから非常に早く溶出して、カラムのボイド前(pre-void)溶出とも呼ばれます。この電荷が同じだったり反対だったりしたクロマトグラムが、図1.で表示されています。(+)電荷をもつ溶質イオンを、(+)電荷をもつ固定相表面(陰イオン交換体カラム)に注入したのが赤で表示されており、(+)電荷をもつ溶質イオンを、(-)電荷をもつ固定相表面(陽イオン交換体カラム)に注入したのが青で表示されています。今回の陰イオン交換体カラムですと、溶質がカラムの中を相互作用していかず、素通りする時間もしくはカラムボイド時間(void time)が1.5分以下です。

図4. Column surface charge effect on protonated Dopamine retention in Ion-Exclusion and Ion-Exchange modes

二重電荷 vs. 単独電荷したバッファーイオン

典型的な例として、(+)電荷をもつ溶質イオンを、(+)電荷をもつ固定相表面の樹脂が充填されたカラムに注入しますと、溶質イオンと固定相のインターラクションがほとんどありません。その結果、溶質イオンがイオン的反発作用で、固定相樹脂の孔に入らずにカラムのボイド前(pre-void)に溶出します(図5.青で表示)。しかし単独電荷したバッファーイオン(TFA)を二重電荷したバッファーイオン(H2SO4)に置き換えますと、カラムに保持されます(図5. 赤で表示)。従来のクロマトグラフィ理論ですと説明できませんが、(+)電荷をもつドーパミンを移動相がH2SO4バッファーイオン含有の高濃度アセトニトリルですと保持されます。これは非常にユニークな現象です。

図5. Buffer effect on retention of protonated dopamine

ビーストは、(+)電荷をもつ溶質イオンと(+)電荷をもつ固定相表面の樹脂が充填されたカラムに適用されるだけでなく、(-)電荷をもつ溶質イオンと(-)電荷をもつ固定相表面の樹脂が充填されたカラムにも適用できます。その例が図6.で表示されている3個の酸性基をもち、また(-)電荷をもつタートラジン(Tartrazine)が、(-)電荷をもつ固定相表面の樹脂が充填された陽イオン交換体カラムで分析されています。ビーストでは、(-)電荷をもつタートラジン(Tartrazine)が、二重電荷したバッファーイオン[例:酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、TMDAP(テトラメチル・ジアミノプロパン:N, N, N’, N’-tetramethyldiaminopropane)] 含有の高濃度アセトニトリルですと保持されます。しかし単独電荷したバッファーイオン(例:酢酸ナトリウム)含有の高濃度アセトニトリルでは保持されません(図6.参照)。

図6. Buffer type’s effect on retention of negatively charged Tartrazine on a cation-exchange column

ビーストは電荷をもつ溶質イオンを強く保持するだけでなく、優れた選択性も提供します。電荷した固定相表面と電荷した溶質との間にブリッジを架けた際に、溶質の構造が架橋の安定性に影響します。この相互作用は近接する固定相表面で発生しますので、溶質の電荷している箇所の小さな違いでも、他の交換基の存在などの影響で、保持力及び選択性に影響してきます。しかし単独電荷したバッファーイオンでは、このような保持力及び選択性は得られません。

図7. Selectivity of BIST separation of Paraquat and Diquat

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