マウス血清タンパク質(Mouse Serum)のプロテオーム(Proteome)解析

ヒト血清タンパク質のプロテオーム解析に関して、以前に米国Dr. Richard D. Smithのグループによる、LC/LC/MS/MS(強陽イオン交換体HPLCカラム/逆相HPLCカラム/タンデム質量分析装置)を利用しての解析例を紹介しました(2003年2月掲載)。今回は、 米国Dr. Timothy D. Veenstraのグループによる、マウス血清タンパク質のプロテオーム解析を紹介します(出典文献1.)。最近の研究では、血清中に微量でしか存在しない多くのペプチド/タンパク質が、前処理段階で大量に存在するアルブミン、免疫グロブリン、トランスフェリンなどを除去する際に、一緒に除去されていると報告されています。このことから今回のマウス血清サンプルでは、やはり以前に紹介しました「ミックス・ベッド・イオン交換体HPLC」を用いて、前処理用クロマトグラフィを行いました(2003年4月掲載)。 そして最終的にはマウス血清タンパク質全体の、約16%に相当する12,300以上のペプチドから成る4567種類のタンパク質が、分離解析できました。

ここではまず水で希釈したマウス血清サンプルを、今回は弱陰イオン交換体[ポリワックスLP (PolyWAX LP)]/弱陽イオン交換体[ポリキャットA (PolyCAT A)]HPLCカラムの順番で直列に繋いだ「新ミックス・ベッド・イオン交換体HPLC」に負荷します。十分な洗浄後、それぞれのカラムを切り離して、吸着しているタンパク質をグラジエントで溶出します。その際これらのカラムから採取したフラクションは、弱陰イオン交換体カラムからの溶出分として7つのサブ・フラクションに分け、弱陽イオン交換体カラムからの溶出分として5つのサブ・フラクションに分けました。そして、ここで分けた各サブ・フラクションを、トリプシン酵素で消化し凍結乾燥します。次に各々の凍結乾燥済みサブ・フラクションを溶解し、強陽イオン交換体[ポリスルフォエチルA(PolySULFOETHYL A)]HPLCカラムで分離します。ここで採取した各フラクションは、まず再度凍結乾燥し、最後にLC(µRPLC)/MS/MS解析するために、再度溶解して解析されていきます。

新ミックス・ベッド イオン交換体HPLCカラム[弱陰イオン交換体 ポリワックスLP (PolyWAXLP)/弱陽イオン交換体 ポリキャットA(PolyCAT A)HPLCカラム]によるインタクトのマウス血清の前処理用クロマトグラフィ条件

サンプル: 200µlのマウス血清を水で希釈して1mlのサンプルとする
カラム: 204WX0510(PolyWAX LP 1000Å, 5µm, 4.6mm内径 × 200mm)と204CT0510 (PolyCAT A 1000Å, 5µm, 4.6mm内径 × 200mm)を、接続ユニオンで直列に繋いだ、新ミックス・ベッド イオン交換体HPLCカラム
移動相B: 0.6M酢酸アンモニウム、5%アセト二トリル、pH6.0

サンプル負荷後、接続されているカラムを、2%Bの洗浄液を用いて、1ml/min流速で30分間通液します。

 

図1. インタクトのマウス血清負荷及び洗浄後、切り離されたPolyWAX LPカラムからの溶出

カラム: 204WX0510(PolyWAX LP 1000Å, 5µm, 4.6mm内径 × 200mm)
移動相A: 5%アセト二トリル
移動相B: 0.6M酢酸アンモニウム、5%アセト二トリル、pH6.0
グラジエント: 1) 2%移動相Bで、10分間のカラム平衡化
2) 2→100%移動相Bの70分間グラジエント
3) 100%移動相Bで、6分間のカラム洗浄
流速: 1ml/min
検出器: UV280nm

 

図2. インタクトのマウス血清負荷及び洗浄後、切り離されたPolyCAT Aカラムからの溶出

カラム: 204CT0510(PolyCAT A 1000Å, 5µm, 4.6mm内径 × 200mm)
移動相A: 5%アセト二トリル
移動相B: 0.6M酢酸アンモニウム、5%アセト二トリル、pH6.0
グラジエント: 1) 2%移動相Bで、10分間のカラム平衡化
2) 2→100%移動相Bの70分間グラジエント
3) 100%移動相Bで、6分間のカラム洗浄
流速: 1ml/min
検出器: UV280nm

 

 

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