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親水クロマトグラフィ(HILIC: PolyHYDROXYETHYL A™)を利用したLC/MS/MSによる血中及び尿中のニコチン(nicotine)代謝産物のメタボローム(Metabolome)解析

多くの人が喫煙の危険性と、それがニコチンによる中毒から引き起こされている現実を知っています。このニコチン依存症を治療するには、ニコチンの代謝及び排出に関する評価が必要となります。また治療中における患者のニコチン禁断症状を和らげるために、処方されるニコチン・パッチ(経皮吸収ニコチン製剤)投薬量は、血清中のニコチン濃度や尿中のコチニン(cotinine)濃度を参考とします。そしてニコチン代謝産物及びアナバシン(anabasine)が体内に残存してないことが、禁煙治療の成功を証明します。今回ここで紹介いたします米国Dr. Thomas P. Moyerのグループは、親水クロマトグラフィ(HILIC: Hydrophilic Interaction Chromatography)を利用したLC/MS/MS(HILIC HPLCカラム/タンデム質量分析装置)で、血清中あるいは尿中のニコチン代謝産物[ニコチン、コチニン、trans-3’-ヒドロコチニン(trans-3’-hydroxycotinine)、アナバシン、ノルニコチン(nornicotine)]のメタボローム解析を行いました(出典文献1.)。

固相抽出カラムなどの前処理が施されたサンプルは、HPLCカラムに負荷できるように、アセトニトリル溶媒中に存在させます。ニコチンとアナバシンの構造は類似し、更に同等の分子量と娘イオンを持っていますので、質量分析装置に負荷する前のカラムによる分離が、非常に重要になってきます。ここでは順相クロマトグラフィの一種である、親水クロマトグラフィのポリハイドロキシエチルA (PolyHYDROXYETHYL A)カラムを使用した分離例を示しました。

ニコチン代謝産物の質量分析データ



図1.及び2. ニコチン、ニコチン-d3の質量分析データ



図3.及び4. コチニン、コチニン-d3の質量分析データ


図5. trans-3’-ヒドロコチニン、コチニン-d3の質量分析データ


図6. アナバシン、コチニン-d3の質量分析データ


図7. ノルニコチン、コチニン-d3の質量分析データ

サンプル: コントロール・サンプル(ニコチン-d3及びコチニン-d3は内部標準物質)
カラム: 104HY0501(PolyHYDROXYETHYL A 100Å, 5µm, 4.6mm内径 × 100mm)
移動相: 200ml純水(タイプ1)、1800mlアセトニトリル、1.3gギ酸アンモニウム、15mlギ酸(88%)
流速: 1.0ml/min
温度: 室温
検出器: タンデム質量分析装置(API 2000, PE Sciex)



出典文献1. Simultaneous Analysis of Nicotine, Nicotine Metabolites, and Tobacco Alkaloids in Serum or Urine by Tandem Mass Spectrometry, with Clinically Relevant Metabolic Profiles. Thomas P. Moyer, Joel R. Charlson, Robert J. Enger, Lowell C. Dale, Jon O. Ebbert, Darrell R. Schroeder, and Richard D. Hurt, Clinical Chemistry 48:9, 1460-1471 (2002)

 

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