ヒト単核細胞、THP-1の選択的プロテオーム解析のための前処理用クロマトグラフィ
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最近プロテオーム解析を利用して、異なる状態の細胞で発現するタンパク質を、同定及び相対定量する研究が盛んです。しかし細胞の全タンパク質を、二次元電気泳動などで網羅的に解析すると、それは膨大な量となり長い処理時間が必要となります。ここではそれに替わる手法として、前処理用クロマトグラフィ「ミックス・ベッド
イオン交換体HPLCカラム」を用いた、選択的プロテオーム解析を紹介いたします。
まず、ヒト単核細胞、THP-1由来の全タンパク質を酵素消化せずにインタクトのタンパク質の状態で、弱陽イオン交換体/弱陰イオン交換体
HPLCカラムを直列で繋いだ「ミックス・ベッド イオン交換体HPLCカラム」に負荷します。その際、負荷された全てのタンパク質は、陽イオン交換体(−)か、陰イオン交換体(+)に吸着され、漏れがありません(クロマトグラム上で、最初に見られる非吸着分画のピークがありません)。次に、吸着分配(分離)するために、塩濃度グラジエントでタンパク質を溶出していき、フラクションを採取します。そして選択的に探索したいフラクションだけを、トリプシン等の消化酵素で処理し、LC/MS/MSあるいはLC/LC/MS/MSでタンパク質を同定します。尚、前回ご紹介させて頂いた「ヒト血清タンパク質のLC/LC/MS/MS
による網羅的プロテオーム解析(2003年2月掲載)」ですと、全タンパク質中で大きな割合を占めるアルブミンが、最初からトリプシン酵素で消化されペプチド断片にされてしまい、この消化された多様なアルブミン由来のペプチド断片が、一番目の強陽イオン交換体(SCX)で分離/分取した際に、ほとんど全てのフラクションに混入してきてしまい、その処理量は膨大になってしまいました。
ミックス・ベッド イオン交換体HPLCカラム[弱陽イオン交換体 ポリキャットA(PolyCAT
A)/弱陰イオン交換体 ポリワックス
LP (PolyWAX LP) HPLC カラム]による前処理用クロマトグラフィの条件
まずTHP-1細胞ペレットを、50% HFIP(ヘキサフルオロ・イソプロパノール)/50% ぎ酸 溶液で溶解します(膜タンパク質にも有用です)。
図1. インタクトのタンパク質
サンプル: |
上記のTHP-1細胞溶解液(6 × 106 cells相当)を、15mM酢酸アンモニウムで50倍に希釈し、遠心分離後の上清をサンプルとする |
カラム: |
104CT0510(PolyCAT A 1000Å, 5µm, 4.6mm内径 × 100mm)と104WX0510
(PolyWAX LP 1000Å, 5µm, 4.6mm内径 × 100mm)を、接続ユニオンで直列に繋いだ、ミックス・イオン交換体HPLCカラム
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移動相A: |
15mM酢酸アンモニウム、0.1% HFIP、40% イソプロパノール、30% アセトニトリル、10mM過塩素酸ナトリウム、pH6.0 |
移動相B: |
15mM 酢酸アンモニウム、0.1%HFIP、40% イソプロパノール、30% アセトニトリル、0.8M 過塩素酸ナトリウム、pH6.0 |
グラジエント: |
1) 100% 移動相Aで、10分間のカラム平衡化
2) 0→100% 移動相Bの90分間グラジエント
3) 100% 移動相Bで、10分間のカラム洗浄
4) 100→0% 移動相Bの10分間逆グラジエント
5) 100% 移動相Bで、60分間のカラム再平衡化 |
流速: |
0.5ml/min |
検出器: |
UV280nm |
図2. 臭化シアンで消化されたタンパク質
サンプル: |
上記のTHP-1細胞溶解液(4.8 × 107 cells相当)を、一晩かけ臭化シアンで消化します。その消化済みの溶解液を、水、その後移動相Aで、順次に透析し、遠心分離後の上清をサンプルとする |
カラム: |
204CT0510(PolyCAT A 1000Å, 5µm, 4.6mm内径 × 200mm)と204WX0510 (PolyWAX
LP 1000Å, 5µm, 4.6mm内径 × 200mm)を、接続ユニオンで直列に繋いだ、ミックス・イオン交換体HPLCカラム
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移動相A: |
15mM酢酸アンモニウム、0.1% HFIP、40% イソプロパノール、30% アセトニトリル、10mM過塩素酸ナトリウム、pH6.0 |
移動相B: |
15mM 酢酸アンモニウム、0.1%HFIP、40% イソプロパノール、30% アセトニトリル、0.8M 過塩素酸ナトリウム、pH6.0 |
グラジエント: |
1) 100% 移動相Aで、10分間のカラム平衡化
2) 0→100% 移動相Bの90分間グラジエント
3) 100% 移動相Bで、10分間のカラム洗浄
4) 100→0% 移動相Bの40分間逆グラジエント
5) 100% 移動相Bで、60分間のカラム再平衡化 |
流速: |
0.3ml/min |
検出器: |
UV280nm |
Courtesy of Leticia Cano(City of Hope Graduate
School) and Andrew J. Alpert(PolyLC Inc.)
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