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疎水クロマトグラフィのポリプロピルA™ (PolyPROPYL A™)カラム
による抗体-薬物複合体(ADC)のキャラクタリゼーション

抗体-薬物複合体(ADC: Antibody-Drug Conjugate)は、従来の抗体医薬品の限界、例えば、低い毒性や腫瘍への低浸透性を克服する、非常に強力な標的治療分子です。ADCは次の三つの主要成分でできています。(1)腫瘍の細胞表面にある抗原を、特異的に認識するモノクローナル抗体で内部移行が可能、(2)非常に強力な細胞毒性をもつ低分子薬物、(3)そしてこの低分子薬物を、モノクローナル抗体に共有結合させるリンカーです。これらの組み合わせは、抗体単独と比較して腫瘍壊滅の可能性が高く、オフ・ターゲット効果の低減により治療指数が上がります。抗体分子の結合反応において、効果的に異なるレベルの反応プロセスを行った結果生じるADCの不均質性が、これら医薬品候補の開発における挑戦となります。薬物/抗体比(DAR: Drug to Antibody Ratio)は、反応プロセスにおいて、抗体が持つ鎖間のジスルフィド結合の還元がどの程度まで起こり、また反応物とのストイキオメトリー(stoichiometry)によってコントロールされます。この多様なDARを持つ、理論的に可能なADCの構造は、下記の図1.に表示されています。

図1. 多様なDARを持つADCアイソフォームの構造

今回ここで紹介しますのは、米国ファイザー社(Pfizer Inc.)が疎水クロマトグラフィ(HIC: Hydrophobic Interaction Chromatography)のポリプロピルA(PolyPROPYL A)カラムを使用して、このDAR分布プロファイルと配置アイソフォームのキャラクタリゼーション及び、そのADCアイソフォームの定量を行っています(出典文献1.)。

図2. ADCアイソフォームの疎水クロマトグラフィによるプロファイリングとその定量

カラム: 104PR0315 (PolyPROPYLA, 1500Å, 3µm, 4.6mm内径 × 100mm)
サンプル: ADCアイソフォームを20% 移動相Aで、2mg/mL 濃度まで希釈
移動相A: 1.5M 硫酸アンモニウム含有25mM りん酸ナトリウム、pH 7.0
移動相B: 20% イソプロパノール含有25mM りん酸ナトリウム、pH 7.0
グラジエント: 1) 0→100%移動相Bの15分間グラジエント
2) 100%移動相Bで、5分間通液
流速: 0.8mL/min
検出器: UV280nm
温度: 5ºC

出典文献1. Characterization and Higher-Order Structure Assessment of an Interchain Cysteine-Based ADC: Impact of Drug Loading and Distribution on the Mechanism of Aggregation, Jianxin Guo, Sandeep Kumar, Mark Chipley, Olivier Marcq, Devansh Gupta, Zhaowei Jin, Dheeraj S. Tomar, Cecily Swabowski, Jacquelynn Smith, Jason A. Starkey, and Satish K. Singh, Bioconjugate Chemistry 2016, 27, 604-615

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