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ポリキャットA™(PolyCAT A™)カラムを利用した弱陽イオン交換体/親水性インターラクション(WCX-HILIC)ミックス・クロマトグラフィ分離モード

ボトムアップ・プロテオミクスでは、逆相クロマトグラフィHPLCカラムを使用するのが一般的ですが、トップダウン・プロテオミクスでは、異なるクロマトグラフィ分離モードが必要となります。

今回はポリキャットA(PolyCAT A)カラムを使用して、弱陽イオン交換体(WCX: Weak Cation Exchange)の電荷的吸着と、親水性インターラクション(HILIC)を用いたWCX-HILICミックス・クロマトグラフィ分離モードで、17種類の翻訳後修飾(PTM: Post-Translational Modification)が生じた後、その組み合わせで派生する700を超えるヒストンH3のバリアントを同定しました。この難しい解析において質量分析装置に負荷する前に、これらのバリアントを非常に良く分離するクロマトグラフィが必要となります。この分離はPolyCAT A弱陽イオン交換体樹脂が充填されたキャピラリーLCカラムで可能となりました。ここでは電荷的吸着と同等に、60~70% ACNを添加した移動相による親水性インターラクションを用いて、アルギニン残基やリシン残基のメチル化で生じた極性の変化による翻訳後修飾箇所の違いが、分離につながります。また弱陽イオン交換体樹脂は、pH4以下で(−)の電荷を喪失します。このWCX-HILICミックス・クロマトグラフィ分離モードはACN濃度を下げたり(親水性インターラクションを弱める)、pHも下げたり(電荷的吸着を弱める)して、完全に揮発性の移動相で使用できます。そして溶出してくるタンパク質を、質量分析装置(MS)に直接負荷できます。

H3フラグメントのFull MSスペクトル
下記のデータにおけるピーク集合体は、一箇所のメチル化による14Da違いのH3末端を、SILAC法(Stable Isotope Labeling by Amino Acids in Cell Culture: 培養細胞内のアミノ酸を使用した安定同位体標識)を用いて、アルギニン残基とリシン残基をラベル化して検出した事例です。右側のPolyCAT A 2µm粒径樹脂は、左側のPolyCAT A 3µm粒径樹脂より分離が良いです。

3µm, 1500-Å PolyCAT A
(peak not well-separated from other H3 peptides)

2µm, 1000-Å PolyCAT A
(nice, sharp, isolated peak)

(data courtesy of S. Sidoli and B.A. Garcia, Univ. of Penn.)

 

マウス胚性幹細胞からのヒストンH3の翻訳後修飾
WCX-HILIC-MSを用いて、マウス胚性肝細胞(Wild TypeとSuz12ノックアウト株)における、ヒストンH3の翻訳後修飾箇所や量を比較した事例です。
キャピラリーカラム: PolyCAT A 1500Å, 3µm, 220mm × 75µm
左側のグラフ: Wild-type histone H3
右側のグラフ: Histone H3 from protein methyltransferase Suz12 knockout mice

出典文献1. Middle-down hybrid chromatography/tandem mass spectrometry workflow for characterization of combinatorial post-translational modifications in histones, Simone Sidoli, Veit Schwammle, Chrystian Ruminowicz, Thomas A. Hansen, Xudong Wu, Kristian Helin and Ole N. Jensen, Proteomics 2014, 14, 2200-2211

 

WCX-HILICによるヒストンのアイソフォーム(Histone H4)分析
ヒストンH4はリシン残基のアセチル化に特徴があります。より多くのアセチル化したアイソフォームは、よりいっそう(+)電荷が少なくなりますので、WCX-HILICでは初期の段階で溶出されます。下記のクロマトグラムはリシン残基のアセチル化に加えて、多数の翻訳後修飾をもつヒストンH4アイソフォームが溶出する位置を示しています。

出典文献2. Enhanced top-down characterization of histone post-translational modifications, Zhixin Tian, Nikola Tolic, Rui Zhao, Ronald J Moore, Shawna M Hengel, Errol W Robinson, David L Stenoien, Si Wu, Richard D Smith and Ljiljana Pasa-Tolic, Genome Biology 2012, 13:R86

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