抗体−薬物複合体(ADC: Antibody-Drug Conjugate)は、新しいタイプのがん治療薬として開発されました。ADCは特定のがん細胞に結合する抗体と、そのがん細胞を死滅させる毒素を結合させた抗がん剤です。従来の化学療法で使用されてきた抗がん剤とは異なり、特定のがん細胞だけを標的としますので、他の正常な細胞に影響を与えず、より特異的で副作用の少ない治療薬です。今回ここで紹介しますのは、米国シアトル・ジェネティクス社(Seattle Genetics, Inc.)が開発した、インタクトの抗体とそれに非共有結合しています毒素の状態を、迅速に解析できる方法です(出典文献1.)。従来のオンライン・サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)カラム/質量分析装置では、ポリハイドロキシエチルA(PolyHYDROXYETHYL A)カラムの移動相として、0.1~0.2%ぎ酸を使用していましたが、今回は抗体の非共有結合の解離を防ぐために、下記分析条件のように、酢酸アンモニウムを中性のpHで使用しました。他にもフランスのグループは、カラムサイズが異なる、1mm内径×150mmのポリハイドロキシエチルAカラム(品番: 151HY0503)を、ADCの解析方法に使用しています(出典文献2.)。
カラム: | 202HY0503 (PolyHYDROXYETHYL A, 300Å、5µm、2.1mm内径×200mm) |
サンプル: | Monomethyl Auristatin E及びFが結合したIgG1 |
移動相(アイソクラチック): | 200mM 酢酸アンモニウム、pH 7 |
流速: | 0.1mL/min |
検出器: | Agilent 6510 QTOF質量分析装置 |
出典文献1. | Native Intact Mass Determination of Antibodies Conjugated with Monomethyl Auristatin E and F at Interchain Cysteine Residues, John F. Valliere-Douglass, William A. McFee, and Oscar Salas-Solano, Analytical Chemistry 2012, 84, 2843-2849 |
出典文献2. | Antibody-Drug Conjugate Model Fast Characterization by LC-MS following IdeS Proteolytic Digestion, Elsa Wagner-Rousset, Marie-Claire Janin-Bussat, Olivier Colas, Melissa Excoffier, Daniel Ayoub, Jean-Francois Haeuw, Ian Rilatt, Michel Perez, Nathalie Corvaia, and Alain Beck, Landes Bioscience, mAbs 6:1, 173-184; January/February 2014 |